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離婚したら、子どもはどうなる?世界の常識と、日本の現実。その差を3人が語る。

6 日前
読了時間: 5分

更新日:4 日前


2025年10月。ある研究者の家から、子ども3人(8歳、6歳、4歳)がいなくなった。


本人の説明によれば、妻が無断で連れて出た。警察は「家庭の問題」として動かず、家庭裁判所も動かなかった。彼は14年間、日本の大学で研究を続けてきたイタリア人だ。半年後の2026年3月、大学を辞め、イタリアに帰った。


この出来事を「ひとつの家庭の悲劇」で終わらせるかどうかが、この記事のテーマだ。


制度は変わった。では、現場は?


2026年4月、改正民法が施行され、日本でも離婚後に共同親権を選べるようになった。ここで話が終わるなら、シンポジウムを開く必要はない。


問題は、条文が変わっても、現場が同じ場所に立っていることだ。連れ去りに歯止めはあるか。別居親の時間は確保されるか。養育費は届くか。DVの被害者は守られ、同時に、不当に親子が切られることもないか。


この問いを考えるには、比較が役に立つ。日本の位置は、世界の中に置いて初めて見える。


世界と日本、5つの差

論点

欧州・G7の多くの国

日本の従来の実務

子どもの位置づけ

独立した権利の主体。両親との関係維持は「子どもの権利」

親権者の監護下に置かれ、交流の可否は同居親の判断に左右されやすい

連れ去り

同意なき連れ出しは違法とされる国が多く、返還を重視する

「継続性の原則」が働き、先に連れ出して安定させた側が有利になりやすい

親子の時間

週の数日や隔週末、長期休暇の折半など、生活を分け合う設計

月1回・数時間が目安とされてきた

養育費

給与天引きや公的な立替・回収の仕組みがある

個人が調べて手続きを進める。受け取れていない家庭が多数派

DVへの対応

専門機関による客観的な評価。保護を前提に、監督付き交流などの道も探る

自己申告中心の運用が指摘され、保護と親子断絶の線引きが曖昧

一つずつ見ていく。


①子どもは誰のものか。

欧州の出発点は、国連・子どもの権利条約にある。子どもは親の付属物ではなく、権利を持つ一人の人間だ。だから両親と会い続けることも、親の権利ではなく子どもの権利になる。日本の実務では、この順序が逆になりやすい。


②連れ去りをどう扱うか。

ミケーレ氏が最も強く問題にしているのがここだ。イタリアなど多くの国では、同意のない連れ出しは違法とされ、返還が優先される。日本では、連れ出した後の「現在の安定」が重く見られ、先に動いた側に有利に働くという批判が続いてきた。ルールが行動を決める。「先に連れて行ったほうが勝つ」ルールなら、人はそう動く。


③時間の質。

欧州の共同養育は、別居親を「たまに会う人」にしない設計だ。平日の登校、隔週末の宿泊、夏休みの折半、学校行事への参加。両方の家が生活の拠点になる。月1回の数時間では、日々の悩みも成長も共有できない。


④お金。

養育費の不払いは、子どもの生活を直接削る。海外には、給与からの天引きや、国が先に立て替えて後から回収する仕組みがある。日本では、相手の勤務先や口座を自分で調べるところから始まる。手続きの重さで、諦める人が出る。


⑤安全。

ここは誤解されやすい。共同親権を進める立場でも、DVや虐待がある場合の保護を軽く見てよいという話ではない。求められているのは、本物の危険を見逃さない仕組みと、対立を理由に親子が切られない仕組みを、両方持つことだ。どちらか一方では、必ず誰かが取りこぼされる。


外から見た日本

この問題は、もう国内だけの話ではない。


日本は2014年にハーグ条約を締結した。ただし対象は国境を越える連れ去りで、国内の連れ去りには及ばない。EU議会は2020年、日本での親による子の連れ去りを問題視する決議を採択している。

ミケーレ氏の説明では、イタリア国会で質問が出され、現地メディアが取り上げ、外相の場でも議題に上ったという。事実関係は各自で確認してほしい。ただ、外国人の研究者や専門職が「日本で家庭を持つリスク」を意識し始めれば、影響は家庭裁判所の中では収まらない。人材、経済、外交の信頼に及ぶ。


答えは、市役所の窓口にある


法律が変わっても、親子が最初に出会う制度は、市区町村の窓口だ。


大東市議の中村はるき氏が注目するのは、そこだ。職員が最も恐れるのは、DV被害者の情報が加害者に漏れることだ。だから疑わしければ、情報を遮断する。安全側に倒すのは当然の判断だ。ただその運用が、結果として親子の断絶に加担していないか。中村氏はそう問い直す。


提案の柱は三つ。


  1. 自己申告だけに頼らず、専門職が介在してリスクを見極める

  2. 離婚届の提出時に、養育計画の案内と相談の機会をつくる

  3. 養育費の保証や、第三者による交流支援に公的な支援を入れる


本当に危険なケースは、警察と連携して守り抜く。葛藤はあっても危険のないケースは、子どもが両方の親と安全に会い続けられるよう、行政が支える。この二重の安全網が、日本の現場で動く形だ。


3人の視点

嘉田由紀子氏(参議院議員/前滋賀県知事)

環境社会学者。滋賀県知事を2期務め、現在は国政の立場から共同親権・共同養育の法整備を進める。制度の課題を、立法の現場から語る。


ミケーレ・ダッラルノ氏(Ph.D./イタリア国フォルリ市民)

量子情報理論の研究者。2012年に来日し、複数の大学で教育・研究に携わった。子どもと引き離された当事者として、欧州の基準から日本の実務を問う。


中村はるき氏(大東市議会議員)

2016年初当選、現在3期目。子どもの権利擁護を軸に政策を立案してきた。海外の仕組みを日本の自治体に落とし込む方法を示す。


国の法律、当事者の経験、自治体の窓口。この3つが同じ画面に並ぶ機会は多くない。

離婚は、夫婦の終わりだ。親子の終わりではない。この当たり前を、制度と現場の両方で実現できるかどうか。条文の次に問われているのは、そこだ。


共同親権シンポジウム・セカンド日時:

2026年10月2日(金)18:00〜

形式:オンライン(Zoom)

参加費:550円(税込)

テーマ:離婚したら、子どもはどうなる?〜子どもの暮らし、親との時間、養育費。離婚後の子育てを、一緒に考える。


お申し込みはこちら




この記事の執筆者

坂本 迪宇

ネットフェニックス合同会社 代表取締役


神戸市在住。営業(全国5位)、コールセンターの現場改善、難関塾(灘中・洛南・東大寺・開成・麻布など)のマーケティング(10年で灘中合格約100名)を経験。泥臭い「現場の対話」と「再現性のある仕組み」を武器に、企業の集客と組織づくりを支援しています。


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