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数字の裏にある「声」を聴く。【転職サイトの採用単価データ解剖】「一人採用するコスト」の変化から見抜く、2026年秋の採用生存戦略

4 日前
読了時間: 10分

更新日:2 日前


10月に入り、2日目を迎えました。


今週からいよいよ今年度の下半期が本格的にスタートし、採用計画の折り返し地点で予算の消化状況や「一人当たりの採用コスト」を見直している経営者や採用担当者の皆様も多いのではないでしょうか。


「昨年と同じ求人予算を組んでいるのに、思うように応募が集まらない」

「特定職種の採用単価が跳ね上がっていて、予算オーバーになりそうだ」


現場でそんな悲鳴や困惑の声を聞く機会が、今年に入って急激に増えました。


採用活動において、「一人を採るためにいくら広告費(転職サイトの掲載費用等)がかかったか」を示す「採用単価(求人広告費)」は、いわば採用市場の熱量を測る「体温計」です。


ここに、株式会社マイナビが調査した非常に興味深いデータがあります。


テーマは「2025年の中途採用において、職種ごとに採用者1人あたりにかかった転職サイトの求人広告費(2024年との比較)」。


このデータを丁寧に解きほぐしていくと、単に「コストが上がった・下がった」という表面的な話にとどまらない、日本社会における労働市場の劇的な構造変化と「二極化」の現実が浮き彫りになってきます。


下半期がスタートした今だからこそ、18の職種別データを古賀史健の対話の思考で読み解きながら、私たちが限られた予算の中でどう知恵を絞り、欲しい人材を獲得していくべきなのか、一緒に考えていきましょう。


目次

1. 全体像:採用単価は「二極化」の時代へ


まず、今回の調査データに含まれる全18職種の「平均値」および「中央値」の数値を一覧表にまとめました。


(※株式会社マイナビ「中途採用状況調査」より・転職サイトの求人広告費/単位:万円)


【表1】職種別 採用単価(求人広告費)比較データ一覧

職種カテゴリ

2025年 平均値

2024年 平均値

2025年 中央値

2024年 中央値

コスト変動傾向

AI技術者 (※2025年新設)

59.9万円

-

40.0万円

-

【最高額】超激戦

ITエンジニア

57.1万円

39.4万円

30.0万円

30.0万円

【急増】+17.7万

営業

40.4万円

40.0万円

20.0万円

20.0万円

横ばい高止まり

建築・土木

38.8万円

25.5万円

20.0万円

10.0万円

【急増】+13.3万

医薬・食品・化学・素材

38.4万円

18.4万円

30.0万円

8.0万円

【激増】+20.0万

WEB・インターネット・ゲーム

37.7万円

36.9万円

20.0万円

20.0万円

微増・高止まり

電気・電子・機械・半導体

37.3万円

30.7万円

25.0万円

20.0万円

【増加】+6.6万

企画・経営

32.6万円

37.9万円

20.0万円

20.0万円

平均値は減少

管理・事務

32.0万円

35.8万円

10.0万円

20.0万円

【減少】中央値半減

医療・福祉

30.9万円

32.0万円

15.0万円

20.0万円

【微減】

クリエイティブ

29.8万円

34.8万円

20.0万円

20.0万円

平均値は減少

コンサルタント・金融・不動産

29.0万円

28.8万円

15.0万円

10.0万円

【微増】

技能工・設備・配送・農林水産

25.1万円

27.4万円

10.0万円

10.0万円

微減

公共サービス

23.8万円

46.5万円

20.0万円

50.0万円

大幅減少

保育・教育・通訳

20.7万円

22.3万円

10.0万円

10.0万円

微減

販売・フード・アミューズメント

18.8万円

31.0万円

10.0万円

10.0万円

平均値は大幅下落

美容・ブライダル・ホテル・交通

14.3万円

28.1万円

8.0万円

15.0万円

【下落】中央値ほぼ半減

【採用単価(2025年平均値)の二極化構造】

 [超高騰エリア:50万円オーバー]
 ■ AI技術者           ██████████████████████████████ 59.9万円
 ■ ITエンジニア        ████████████████████████████ 57.1万円

 [中間・高止まりエリア:30万円〜40万円台]
 ■ 営業               ████████████████████ 40.4万円
 ■ 建築・土木         ███████████████████ 38.8万円
 ■ 医薬・食品・素材   ███████████████████ 38.4万円
 ■ 管理・事務         ████████████████ 32.0万円

 [沈静化・低水準エリア:20万円未満]
 ■ 販売・フード       █████████ 18.8万円
 ■ 美容・ホテル・交通 ███████ 14.3万円


この表とグラフを眺めたとき、真っ先に目に入るのは「職種ごとの採用単価の圧倒的な格差」です。


最高額の「AI技術者(59.9万円)」や

「ITエンジニア(57.1万円)」と、

最低水準の「美容・ブライダル・ホテル・交通(14.3万円)」を比較すると、

実に4倍以上のコスト差が生じています。


つまり、「中途採用の平均単価は〇〇万円です」という全体の平均値は、もはや何の意味も成さなくなっています。


自社が戦っている「職種ごとのフィールド」を見極めなければ、予算設計は一瞬で崩壊します。


2. データから読み解く「3つの構造変化」

では、なぜこのような偏りが生じているのでしょうか。 数値をさらに深く掘り下げていくと、現代の採用現場で起きている「3つの構造的変化」が見えてきます。

┌───────────────────────────────────────────────────────────────┐
│                 データが示す「3つの構造変化」                  │
├───────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ 1. 【専門技術職の単価高騰】AI・IT・理系専門職の「争奪戦」    │
│ 2. 【ブルーカラー・建設の急上昇】インフラを支える人材の不足  │
│ 3. 【事務・サービス系の単価下落】求職者過多と効率化の波    │
└───────────────────────────────────────────────────────────────┘

変化①:AI・IT・理系専門職の採用単価が「異常値」に達している


2025年のデータから新たに独立した項目となった「AI技術者(AIエンジニア、AIアーキテクトなど)」は、平均単価が59.9万円(中央値40.0万円)と、全職種の中でダントツの首位となりました。


また、「ITエンジニア」も2024年の39.4万円から、2025年には57.1万円(+17.7万円)へと大幅に上昇しています。 同様に「医薬・食品・化学・素材」などの研究開発系職種も、18.4万円から38.4万円(+20.0万円)と倍増しています。


これは単に「転職サイトの広告費が上がった」のではありません。 「どの企業もノウハウを持つ専門人材を欲しがっているが、市場に求職者が圧倒的に足りないため、何度も求人を出し直したり、高額な上位枠(大きな枠組み)に掲載せざるを得なくなっている」という企業側の焦りが、そのまま数値に反映されているのです。



変化②:建築・土木・製造(モノづくり)現場での採用難


「建築・土木」の採用単価は、25.5万円から38.8万円(+13.3万円)へ急増し、中央値も10万円から20万円へと倍増しました。 「電気・電子・機械・半導体」も30.7万円から37.3万円へ増加しています。


労働時間上限規制(2024年問題)の影響や、半導体工場の建設ラッシュ、インフラ老朽化にともなう需要増に対し、若手人材の供給が追いついていません。 かつては「現場職は比較的低いコストで採用できる」とされていた時代は完全に終わりを告げ、今やエンジニア並みの採用コストをかけなければ人が採れないフェーズに入っています。



変化③:管理・事務、サービス系職種の採用単価「下落」のカラクリ


一方で、一見すると不気味な下落を見せている職種もあります。


たとえば「管理・事務」は、平均値こそ32.0万円ですが、中央値は2024年の20.0万円から「10.0万円」へと半減しました。 「美容・ブライダル・ホテル・交通」も平均14.3万円、中央値は15.0万円から8.0万円へ下落。「販売・フード・アミューズメント」も平均18.8万円へと落ち込んでいます。


「コストが下がってラッキーだ」と思われるかもしれません。 しかし、この下落の裏にあるのは「求職者の過剰供給(応募が集まりやすい)」という構造です。


事務職や接客サービス職は、求人を一度出せば多数の応募(時には数百名)が集まるため、上位の広告枠を買う必要がなく、低い掲載プラン(10万円〜20万円程度)で十分に採用が完了してしまうのです。 つまり、「安く採れている」のではなく「求職者が殺到しているため、広告費をかける必要がない」という状態を意味しています。


3. なぜ「平均値」と「中央値」にズレがあるのか?


ここで少し、統計の視点から重要なポイントをお話しさせてください。


データを見ると、「平均値(例:管理・事務 32.0万円)」と「中央値(10.0万円)」の間に大きな開きがあることにお気づきでしょうか。


【「平均値」と「中央値」の違いが意味するもの】

■ 平均値:一部の大企業が「数百万」の莫大な求人広告費をかけると、全体が引き上げられる。
■ 中央値:一般的な中小企業が「実際に払っているリアルな金額(真ん中の値)」。

 [管理・事務の例]
  中央値 (実態)  : 10.0万円 ─── 小さな掲載枠で十分に採れている企業が多数
  平均値 (引き上げ): 32.0万円 ─── 一部の大手企業がハイクラス事務等で多額の広告費を投下

「自社で事務職を採るのに32万円もかかるのか」と怯える必要はありません。 中央値が10.0万円であるということは、世の中の大半の企業は10万円程度のスタンダードな求人掲載で採用に成功しているということです。


逆に、ITエンジニアやAI技術者は、中央値自体が30万円〜40万円に達しています。


これは「安価なプランでは1人も応募が来ず、最低でも30万〜40万円以上の広告枠を買わなければスタートラインにすら立てない」という厳しい現実を物語っています。


4. 下半期に向けた「採用コストの最適化戦略」


では、この二極化された採用単価のデータを踏まえ、私たちは今秋からどのような採用戦略を立てるべきなのでしょうか。


無駄な広告費を削り、狙った人材を確実に獲得するための3つの処方箋を提案します。



【今すぐ実践すべき「3つのコスト最適化戦略」】

 ┌──────────────────────────────────────────────────────────────┐
 │ 戦略①:【職種別の予算配分】「全職種一律」の予算組みを捨てる│
 │ 戦略②:【高単価職種の非・広告化】「リファラル+ダイレクト」へ│
 │ 戦略③:【低単価職種の選考効率化】「集客」から「歩留まり」へ│
 └──────────────────────────────────────────────────────────────┘

戦略①:「全職種一律の予算」を今すぐ廃止する


「今年は年間採用予算500万円だから、10名採用で1人あたり50万円」といった一律の予算組みは、今日限りでやめましょう。


  • 事務職・接客職: 10万円〜15万円の低価格プランで十分集まる。

  • 営業・現場職: 20万円〜30万円の中位プランを確保する。

  • IT・AI・技術職: 50万円〜60万円以上の最上位プラン+スカウトオプションを投入する。


このように、職種の市場相場(中央値)に合わせてメリハリのある予算配分を行わなければ、難易度の高い職種の採用は永久に成功しません。



戦略②:単価が高騰する職種は「広告以外のルート」を併用する


採用単価が50万〜60万円に達しているITエンジニアやAI技術者、建設施工管理などの職種において、転職サイトの広告だけに頼り続けるのは危険です。


採用単価を抑えるためには、以下のハイブリッド戦略が不可欠です。


  1. リファラル採用(社員紹介): 成功報酬として社員に20万〜30万円のインセンティブを支払う方が、求人広告を何回も出すより安く、マッチング精度も高い。

  2. アルムナイ(退職者再雇用): 自社の文化を知っている元社員へのアプローチは、採用単価ほぼ0円で即戦力を獲得できる。

  3. ダイレクト・スカウトのピンポイント運用: 漫然と広告を載せるのではなく、欲しい人材だけにスカウトを打つ。



戦略③:単価が低い職種は「応募対応のスピード」で勝つ


事務職やサービス職のように、10万円前後の低単価で大量の応募が集まる職種における課題は「コスト」ではなく「選考の手間と辞退率」です。


応募が多すぎて書類選考に1週間もかけていると、優秀な応募者は他社に買われてしまいます。 この領域では、求人広告費を増やすのではなく、「応募後24時間以内の連絡」「Web面接の導入による面接率アップ」といった選考プロセスの高速化にリソースを投資すべきです。

5. おわりに:「お金」をかける前に、「言葉」を磨く


10月に入り、下半期が本格スタートした今、私たちが胸に刻むべきことがあります。


それは、「採用単価とは、企業の工夫不足を補うための『授業料』でもある」ということです。


確かに、ITや建設など市場全体で人が不足している職種では、一定の広告投資はやむを得ません。 しかし、「求人原稿に魅力がないから、高い枠を買って目立たせる」「自社のビジョンが語れないから、お金を積んでスカウトを打ちまくる」という姿勢で使われるお金は、非常に勿体ないものです。


もし、貴社の採用単価が上がっているのだとしたら。 広告費を増やす前に、一度立ち止まって考えてみてください。


「私たちは、求職者に対して『ここで働く理由』を自分の言葉で語れているだろうか?」


どれだけ高額な求人枠を買っても、そこに書かれている言葉が退屈で、誰の心にも刺さらない定型文であれば、お金はドブに捨てることになります。 逆に、求職者の心に突き刺さる熱いメッセージと誠実な条件が書かれていれば、小さな求人枠からでも奇跡のような出会いは生まれます。


下半期の採用活動。 単に予算を増やすのではなく、まずは自分たちの「言葉」と「選考の誠実さ」を磨くことから始めてみませんか。


(※本記事内のデータは、株式会社マイナビ「中途採用状況調査」に基づき作成・分析しています)



この記事の執筆者

坂本 迪宇

ネットフェニックス合同会社 代表取締役


神戸市在住。営業(全国5位)、コールセンターの現場改善、難関塾(灘中・洛南・東大寺・開成・麻布など)のマーケティング(10年で灘中合格約100名)を経験。泥臭い「現場の対話」と「再現性のある仕組み」を武器に、企業の集客と組織づくりを支援しています。


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