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数字の裏にある「声」を聴く。有効求人倍率6.5倍の時代に、私たちが人を採用するために本当に必要なこと

9月28日
読了時間: 10分

更新日:2 日前


求人を出しても、応募がまったく来ない。 面接の約束をしたのに、当日連絡がとれなくなってしまう。 せっかく内定を出したのに、「他社に決めました」とあっさり断られてしまう——。


いま、多くの経営者や採用担当者のみなさんが、深い溜め息をつきながらPCの画面を見つめているのではないでしょうか。


「なぜ、こんなにも人が採れないのだろう?」と。


もちろん、理由は分かっているはずです。テレビをつければ「空前の売り手市場」という言葉が飛び交い、新聞を開けば「少子高齢化による人手不足」の文字が躍っています。


けれど、ここでちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。

私たちは「売り手市場だから仕方がない」という言葉で、思考を停止させてはいないでしょうか。


ここに、厚生労働省が発表している「有効求人倍率」のデータがあります。 この数字の羅列を、ただの「統計」として眺めるのではなく、一人の人間が悩み、選び、生きている「現場のリアル」として翻訳してみましょう。


そこから見えてくるのは、従来の採用手法の限界であり、同時に、これからの時代を生き抜くための「たったひとつの希望」なのです。


目次

1. データで見る「有効求人倍率」の現在地


まずは、私たちが直面している市場の全体像を、データを通して客観的に見てみましょう。



【データ①】全国・有効求人倍率の歴史的推移(年別・月別)


有効求人倍率とは、「求職者1人に対して、何件の求人があるか」を示す数値です。 1.0を超えれば「売り手市場(人手不足)」、1.0を下回れば「買い手市場(人余り)」を意味します。


【年別・有効求人倍率の長期的トレンド】

 高 ▲ (倍)
    │
1.80│                            ● 1.60(2018-2019年:ピーク)
    │                          /  \
1.20│      ● 1.00            /      ● 1.18(2021年:コロナショック)
    │    /  \            /          \
0.80│  /      \        /              ●─● 1.20台(現在:売り手市場定着)
    │ /          ● 0.45(2009年:リーマンショック)
0.00└───────────────────────────────────────────────────────────► 年月
      2008年    2011年    2018年   2020年   2024〜2026年

【表1】全国・有効求人倍率の推移(主要ポイント抜粋)

期 間

有効求人倍率

市場の状況・解説

2008年〜2009年

0.45 - 0.60倍

リーマンショック期:求人が激減し、超・買い手市場(就職氷河期)に。

2018年〜2019年

1.60倍前後

コロナ前ピーク:空前の人手不足となり、採用難が深刻化。

2020年〜2021年

1.10 - 1.18倍

コロナ流行期:経済活動の停滞により一時的に落ち込む。

2024年〜2026年

1.16 - 1.20倍

現在:再び上昇・底打ちを経て高水準で安定。「常態的な売り手市場」へ。

(※厚生労働省「一般職業紹介状況」季節調整値データより)



ショックのたびに傷つき、それでも「人不足」へ向かう国


歴史を振り返ると、非常に興味深いパターンが見えてきます。


  • 2008年のリーマンショックでは、倍率は0.45倍まで暴落しました。仕事を探す人10人に対して、4件か5件しか求人がない状態です。

  • 2020年のコロナショックでも、倍率は一時的に1.1倍台まで落ち込みました。


しかし、経済ショックが過ぎ去ると、倍率はあっという間に「1.20倍前後」へと戻っていきます。

なぜだと思いますか? 答えはとてもシンプルです。この国の「働く人の絶対数(生産年齢人口)」そのものが、加速度的に減り続けているからです。


企業が「欲しい人(求人)」の数は、景気によって増減します。けれど、市場にいる「働ける人(求職者)」のプールは、どれだけ待っても二度と増えることはありません。

私たちは今、一時的なブームではなく、「構造的な欠乏の時代」を生きています。


2. 誰も教えてくれない「1.16倍」という数字の嘘

「なんだ、全国平均の有効求人倍率は1.16〜1.20倍程度ですか。

なら、求職者1人に対して

1.2社くらいの争奪戦なら、

うちでもなんとかなるんじゃないかな?」


もしあなたがそう思ったとしたら、それは非常に危険な罠にはまっています。


平均値というのは、時に残酷なほど事実を隠蔽してしまうものです。 データを「職種別」に細かく分解したとき、私たちは背筋が凍るような「断絶」を目にすることになります。



【データ②】職種別・有効求人倍率の比較(2023年〜2026年)


ここに、厚生労働省のデータから抜粋した「職種別の有効求人倍率」の比較表があります。数字の違いに注目してください。


【表2】主要職種別 有効求人倍率の推移

職種分類

2023年7月

2024年7月

2025年7月

2026年7月

採用難易度・倍率の印象

建築・土木・測量技術者

6.52倍

6.58倍

6.59倍

6.65倍

🚨 超・過熱(1人を6〜7社で奪い合い)

介護サービスの職業

3.41倍

3.50倍

3.49倍

3.47倍

🔴 極めて厳しい(深刻な手不足)

輸送・機械運転の職業

2.34倍

2.30倍

2.32倍

2.26倍

🟠 厳しい(2024年問題等の影響)

営業の職業

2.22倍

2.29倍

2.29倍

2.20倍

🟠 厳しい(経験者確保が難航)

情報処理・通信技術者(IT)

1.67倍

1.64倍

1.63倍

1.50倍

🟡 やや厳しい(スキル層は激戦)

職種計(全職種平均)

1.22倍

1.19倍

1.19倍

1.16倍

⚪ 平均値

一般事務の職業

0.32倍

0.31倍

0.31倍

0.28倍

🔵 超・買い手優勢(求職者が余剰)

(※厚生労働省「職業安定業務統計」実数・常用パート除くデータより抜粋)



職種による「天国と地獄」の二極化

【職種別 倍率ギャップのイメージ】

 建築・土木技術者  [6.65倍]  ██████████████████████████████ (超・人手不足)
 介護サービス      [3.47倍]  ███████████████
 輸送・機械運転    [2.26倍]  █████████1
 営業の職業        [2.20倍]  █████████
 ── 全職種平均 ──  [1.16倍]  █████
 一般事務の職業    [0.28倍]  █ (求職者過多)

……この表と図を見て、どう感じられるでしょうか?


そうなんです。


「平均1.16倍」なんていう穏やかな数字は、現場のどこにも存在しません。


あるのは、「喉から手が出るほど人が欲しいけれど、地球上で誰も見つからない職種」と、「たったひとつの椅子をめぐって大勢が押し寄せている職種」という、極端な二極化だけです。


3. 「6.65倍」の絶望と、「0.28倍」の怪


6.65人の企業が、1人の人間を取り合っている


「建築・土木・測量技術者」の有効求人倍率は、なんと6.65倍です。 これはどういう状態でしょうか。 1人の技術者が「転職しようかな」と手を挙げた瞬間、6社以上の企業が札束と情熱を抱えて駆け寄ってくる、ということです。


都市の再開発、老朽化したインフラの修繕、災害への備え。仕事は山ほどあります。けれど、現場を仕切れる施工管理や技術者の高齢化が進み、若手は入ってきません。


この領域で「求人サイトに募集要項を載せて、応募が来るのを待つ」という行為は、砂漠の真ん中で雨が降るのを祈るのに等しいと言えます。残念ながら、待っているだけでは絶対に応募は来ないのです。



なぜ「一般事務」だけが 0.28倍 なのでしょうか?


一方で、異彩を放っているのが「一般事務」の0.28倍という数字です。 求職者100人に対して、仕事が28件しかありません。超・買い手市場です。


「事務職の求人を出したら、1日で50人も応募が来ました!」と喜ぶ採用担当者の方にいらっしゃいます。 ですが、喜んでばかりもいられません。


なぜなら、ITツールの進化やAIの普及によって、企業側は「事務作業だけをする人」を増やす必要がなくなっているからです。 求職者のみなさんは「快適なオフィスで、残業がなく、体力を使わない仕事」を求めて事務職に殺到しますが、企業側のポストはどんどん縮小しています。


ここにあるのは、「求職者がやりたい仕事」と「社会が必要としている仕事」の、悲しいほど大きなミスマッチなのです。


4. 応募が来ない本当の理由は「言葉」の欠如です


では、求人倍率が2倍、3倍、6倍という荒波の中で、私たち中小企業や現場の採用担当者は、ただ手をこまねいて倒れていくのを待つしかないのでしょうか?


決してそんなことはありません。


ここからが、私が一番お伝えしたいことです。


多くの企業が「採用がうまくいかない」と嘆くとき、その原因を「給与が低いから」「知名度がないから」「業界に人気がないから」と、条件のせいにしてしまいがちです。


けれど、本当にそうでしょうか?


私がさまざまな取材や執筆を通じて感じるのは、採れない企業の多くは「自分たちの言葉で、自分たちの魅力を語れていない」ということです。


求人媒体を開いてみてください。どの企業も、驚くほど同じようなことを書いていますよね。


  • 「アットホームな職場です」

  • 「やりがいのある仕事です」

  • 「成長できる環境が整っています」


こんなテンプレートのような言葉で、誰の心が動くでしょうか。 有効求人倍率が6倍の時代に、6社の中から自社を選んでもらうためには、「条件」の提示ではなく「意思」の提示が必要なのです。


5. 売り手市場を勝ち抜くための「5つの問い」


もしあなたが、本気で良い人材を採用したいと願うなら、次の5つの問いを自社に投げかけてみてほしいのです。

┌────────────────────────────────────────────────────────┐
│  採用力を劇的に変える「5つの自己点検クエスチョン」     │
├────────────────────────────────────────────────────────┤
│ 1. 私たちは「待つ」のをやめ、「会いに行く」覚悟があるか│
│ 2. その条件は「求職者の人生」に寄り添っているか      │
│ 3. 「未経験から育てる」という退路(仕組み)はあるか    │
│ 4. 社員が自分の言葉で「自社の魅力」を語れているか      │
│ 5. 格好をつけず、現場の「リアルなストーリー」を出しているか │
└────────────────────────────────────────────────────────┘

問い①:私たちは「待つ」のをやめ、「会いに行く」覚悟がありますか?


求人サイトに記事を掲載し、応募通知のメールを待つ。その「待ちの姿勢」を今すぐ捨ててみましょう。 ダイレクトリクルーティング(スカウト)を活用し、自社が欲しいと思う人物に、直接メッセージを送るのです。


「あなたのこういう経験に惹かれました」「うちのこういう課題を、あなたと一緒に解決したいのです」 熱量のある個別の言葉(スカウト文)は、必ず相手の心に届きます。



問い②:その条件は「求職者の人生」に寄り添っていますか?

「週休2日」「リモートワーク可」「残業月10時間以内」。 これらは単なる福利厚生のアピールではありません。求職者にとっては「自分の人生(家族との時間や個人の生活)を大切にできるかどうかの指標」なのです。


求人倍率が高い職種で勝負するなら、自社の働き方が時代に取り残されていないか、冷徹に見直す必要があります。



問い③:「育てる」という退路をつくっていますか?

即戦力のプロ(経験者)だけを探そうとするから、倍率6倍のレッドオーシャンで溺れてしまうのです。 「未経験だが、意欲と素直さを持った人物」を採用し、自社で一人前に育てる覚悟はあるでしょうか?


「未経験からプロに育てる研修プログラムがあります」という宣言は、求職者にとってどんな高額な給与よりも魅力的で、安心感を与えるメッセージになります。



問い④:社員は、自分の言葉で会社を語れていますか?


最も強力な採用手法は、現場の社員が「うちの会社、面白いよ」「一緒に働こうよ」と知人を誘う「リファラル採用」です。 社員が自分の会社を誇りに思い、誰かに薦めたくなる環境を作れているでしょうか? もし社員が口を閉ざしているとしたら、問題は採用手法ではなく、組織のエンゲージメント(愛着)そのものにあるのかもしれません。



問い⑤:私たちの「リアルな姿」を見せていますか?


格好をつけたパンフレットや、綺麗な言葉だけのホームページはいりません。 求職者が本当に知りたいのは、「どんな人たちが、どんな想いで、どんな苦労をしながら働いているのか」という生身のストーリーです。


ブログでも、SNSでも構いません。 現場の汗や、失敗談や、それを乗り越えた喜びを、ありのままの言葉で発信してみましょう。その「嘘のないストーリー」に共感した人だけが、本当に長く活躍してくれる仲間になってくれるはずです。


6. おわりに:採用とは「仲間探し」の旅なのです


有効求人倍率のデータは、確かに厳しい現実を私たちに突きつけています。 これから先、日本の人口が増えることはありません。採用が魔法のように楽になる日も来ないでしょう。


けれど、絶望する必要はどこにもありません。


なぜなら、採用とは「世の中の全員から好かれること」ではないからです。 たった一人、自社の理念に共感し、一緒に未来を作りたいと思ってくれる「かけがえのない仲間」と出会えれば、それで大成功なのですから。


1.16倍という平均値に惑わされないでください。 6.65倍という数字に怯える必要もありません。

あなたたちの会社には、どんな魅力があるでしょうか。 そこで働くことで、人はどんな成長や幸せを得られるでしょうか。


今一度、ペンを取り、自分たちの言葉で語り始めてみてください。 その誠実な言葉こそが、この荒波の時代に、素晴らしい仲間を引き寄せる最強の武器になるのですから。


(※本記事内のデータは、厚生労働省「一般職業紹介状況」「職業安定業務統計」を参照しています)




この記事の執筆者

坂本 迪宇

ネットフェニックス合同会社 代表取締役


神戸市在住。営業(全国5位)、コールセンターの現場改善、難関塾(灘中・洛南・東大寺・開成・麻布など)のマーケティング(10年で灘中合格約100名)を経験。泥臭い「現場の対話」と「再現性のある仕組み」を武器に、企業の集客と組織づくりを支援しています。


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