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数字の裏にある「声」を聴く。【採用手法の利用率データ解剖】「企業が使う手法」と「求職者が使う手法」のすれ違いをどう埋めるか?

5 日前
読了時間: 10分

更新日:4 日前


今日から10月。


下半期が本格的にスタートしました。


新年度に向けた採用計画の策定や、秋の採用前線の見直しに頭を悩ませている採用担当者や経営者の皆さんも多いのではないでしょうか。


「求人を出しているのに、なぜか応募が来ない」

「スカウトメールを何百件も送っているのに、反応が驚くほど薄い」

「人材紹介会社に頼っても、費用ばかりかかってマッチする人材に出会えない」


こうした悩みを抱えたとき、

私たちはつい「求人原稿の書き方が悪いのかな」

「提示年収が低いのかな」と、

目の前の条件ばかりに目を向けてしまいがちです。


けれど、ちょっと待ってください。

根本的な「前提」が間違っているとしたらどうでしょうか。


つまり、「あなたが必死に呼びかけている場所(手法)」と、「求職者が本当に立ち止まって話を聞いている場所」が、まったくズレてしまっているとしたら——。


ここに、株式会社マイナビが調査した非常に興味深く、かつ恐ろしいデータがあります。 テーマは「サービスの利用率から見る 最も効果的な採用手法」。


このデータは、「企業が利用している手法(全17項目)」と「求職者が利用している手法(全22項目)」を対比させたものです。


ここには、企業と求職者の間に横たわる「認識のギャップ(すれ違い)」が、残酷なまでに鮮明に映し出されています。


10月という節目の今日、この膨大なデータを古賀史健の対話の思考で解きほぐしてみましょう。 私たちが明日からどのフィールドに立ち、どう言葉を届けるべきなのか。その答えを探す旅に出かけてみましょう。


目次


1. 全体像:圧倒的な1位は「転職サイト」。しかし、その下で起きていること


まず、結論からお伝えしましょう。


企業側にとっても、求職者側にとっても、圧倒的第1位のサービスは「転職サイト」です。


【「転職サイト」利用率の圧倒的トップ】

■ 企業側の利用率  : 49.2% (約2社に1社が利用)
■ 求職者側の利用率: 54.9% (過半数の求職者が利用・全年代性別で1位)

 [求職者]  ██████████████████████████████ 54.9% (転職サイト)
 [企  業]  █████████████████████████ 49.2% (転職サイト)

この数字が示す現実は明確です。


「転職サイト」は依然として、日本の転職市場における「中央広場(メインスクエア)」であり続けています。


求職者の性別・年代別にみても、転職サイトの利用率はすべて第1位。 「まずは転職サイトに登録して求人を眺めてみる」という行動パターンは、2026年の現在においても微動だにしていません。


ですから、「これからはWebサイトの時代じゃない、SNS採用一本でいくぞ!」といった極端なデジタルシフトは、多くの場合失敗に終わります。王道の広場(転職サイト)に出店することは、依然として強力な選択肢なのです。


しかし、問題は「2位以下のデータ」です。 ここをじっくり見比べていくと、背筋が寒くなるような「企業と求職者のすれ違い」が見えてきます。


2. 企業と求職者の「利用率ギャップ」完全データ


まずは、今回の調査に含まれるすべてのデータを可視化した比較表をご覧いただきましょう。

(※株式会社マイナビ「中途採用実態調査」および「転職活動における行動特性調査」より・2024年全国平均)


【表1】採用手法・サービスの利用率比較一覧(企業 vs 求職者)

順位

企業が利用しているサービス

企業利用率

求職者が利用しているサービス

求職者利用率

ギャップ(差)

1位

転職サイト

49.2%

転職サイト

54.9%

+5.7% (求職者高)

2位

求人検索エンジン

45.4%

求人検索エンジン

34.6%

-10.8% (企業高)

3位

職業安定所 (ハローワーク)

43.6%

人材紹介会社

27.7%

-

4位

人材紹介会社 (成果報酬)

43.5%

職業安定所 (ハローワーク)

21.3%

-22.3% (企業超高)

5位

企業ホームページ

42.3%

ダイレクト・リクルーティング

20.8%

-14.2% (企業高)

6位

ダイレクト・リクルーティング

35.0%

企業ホームページ

18.1%

-24.2% (企業超高)

7位

合同企業説明会

27.7%

ヘッドハンティング

15.6%

-

8位

リファラル採用

27.6%

キャリア登録

11.6%

-

9位

採用管理ツール

26.9%

インターネット掲示板

11.2%

-

10位

紙媒体

26.2%

口コミサイト・SNS

9.8%

-

11位

オウンドメディアリクルーティング

22.0%

WEBセミナー・イベント

9.4%

-

12位

SNS

21.4%

合同企業説明会

8.3%

-19.4% (企業高)

13位

縁故

21.2%

フリーペーパー

8.2%

-

14位

アルムナイ採用

21.2%

縁故

7.0%

-14.2% (企業高)

15位

ヘッドハンティング

20.3%

折込チラシ

6.7%

-

16位

タレントプール

18.4%

新聞の求人欄

6.7%

-

17位

その他

0.2%

オウンドメディアリクルーティング

6.7%

-15.3% (企業高)

18位

-

-

リファラル採用

6.5%

-21.1% (企業高)

19位

-

-

有料求人情報誌

5.8%

-

20位

-

-

アルムナイ採用

5.8%

-15.4% (企業高)

21位

-

-

ポスティング

4.5%

-

22位

-

-

その他

0.3%

-


この表をじっくり眺めていると、恐ろしい事実が見えてきませんか?


そう、「企業が一生懸命お金や労力をかけて使っている手段」を、「求職者はそれほど使っていない」という片思いの構造です。


具体的に、特にギャップが激しい「4つのミスマッチ」を掘り下げてみましょう。


3. データから解き明かす「4つの残酷なすれ違い」

┌───────────────────────────────────────────────────────────────┐
│                 採用現場を襲う「4つのすれ違い」               │
├───────────────────────────────────────────────────────────────┤
│ 1. 【ハローワークの罠】企業43.6% vs 求職者21.3%             │
│ 2. 【ダイレクトスカウトの片思い】企業35.0% vs 求職者20.8%    │
│ 3. 【合同説明会の温度感】企業27.7% vs 求職者8.3%             │
│ 4. 【リファラルの幻想】企業27.6% vs 求職者6.5%               │
└───────────────────────────────────────────────────────────────┘

すれ違い①:【ハローワークの罠】企業は頼るが、求職者は離れている


  • 企業側利用率:43.6%(第3位)

  • 求職者側利用率:21.3%(第4位)


企業の実に4割以上(43.6%)が「職業安定所(ハローワーク)」を利用しています。 掲載費用が無料であり、地域密着で採用できるという安心感から、特に中小企業にとっては欠かせないインフラです。

しかし、求職者側を見てください。利用率は21.3%にすぎません。 企業側の半分程度の人しか、ハローワークを使っていないのです。


「無料だからとりあえずハローワークに出しておこう」というスタンスで求人を出しても、そもそもそこに求職者の半分も存在しない。これが「ハローワークを出しても梨のつぶて」という現象のカラクリです。



すれ違い②:【ダイレクト・スカウトの片思い】送る企業と、見ない求職者


  • 企業側利用率:35.0%(第6位)

  • 求職者側利用率:20.8%(第5位)


近年、猫も杓子も導入している「ダイレクト・リクルーティング(スカウト型サービス)」。企業側は35.0%が利用しており、採用の主役に躍り出つつあります。


しかし、スカウトを受け取る側の求職者の利用率は20.8%にとどまっています。


企業側は「熱いスカウトメールを送れば届くはずだ」と信じて送っていますが、求職者からすれば、毎日何十通も届く定型文のコピペスカウトに嫌気が差し、通知をオフにしているケースも少なくありません。 企業側の「届けたい熱量」と、求職者側の「受信感度」に大きな開きがあるのです。



すれ違い③:【合同企業説明会】企業の出展意欲と、求職者の足の重さ


  • 企業側利用率:27.7%(第7位)

  • 求職者側利用率:8.3%(第12位)


ブースを設営し、人事担当者が休日に駆り出される「合同企業説明会」。 企業側の利用率は27.7%と根強い人気がありますが、求職者側で「合説を利用する」と答えた人はたったの8.3%です。


オンライン化が進んだ現代において、「わざわざ会場まで足を運んで説明会を聞く」というハードルは、求職者にとって非常に高くなっています。企業は大きなコストと労力を払ってブースを作っているのに、通りかかる求職者の数は年々減っている……という悲しいギャップが数値化されています。



すれ違い④:【リファラル・アルムナイ採用】制度はあるが、動かない


  • リファラル採用 :企業 27.6% vs 求職者 6.5%

  • アルムナイ採用 :企業 21.2% vs 求職者 5.8%


社内での「紹介(リファラル)」や「再雇用(アルムナイ)」は、採用コストを抑える切り札として、約2〜3割の企業が制度を導入しています。


しかし、求職者側の利用率はどちらも5〜6%程度。 「友達を会社に紹介して、もし失敗したら人間関係が気まずくなる」という求職者側の心理的心理ハードルを越えられないまま、制度だけが空回りしている企業が多いことが分かります。


4. なぜこの「すれ違い」が起きるのか?


なぜ、これほどまでに企業と求職者の間で利用するサービスがすれ違ってしまうのでしょうか?

理由は実にシンプルです。


「企業は『コストと効率』で手法を選び、

求職者は『手軽さと信頼』で手法を選ぶから」です。


【企業と求職者の「選択基準」の違い】

┌────────────────────────┐          ┌────────────────────────┐
│     企業側の優先順位   │          │    求職者側の優先順位  │
├────────────────────────┤          ├────────────────────────┤
│ 1. 掲載料が安い(無料)│  VS   │ 1. スマホで手軽に見れる│
│ 2. 成果報酬でリスク低  │  VS   │ 2. 求人数・情報量が多い│
│ 3. 自社の都合で送れる  │  VS   │ 3. 企業の「リアル」がわかる│
└────────────────────────┘          └────────────────────────┘

企業は「無料のハローワーク」や「リスクの低い成果報酬型」を選びたがります。


しかし求職者は、「スマホアプリで見やすく、写真や動画が多く、情報が整理されている転職サイトや求人検索エンジン」に集まります。


相手がいない場所に、どれだけ魅力的な求人票(メッセージ)を置いても、それは誰にも届かない「ボトルメール」のようなものです。


5. 下半期(10月以降)に向けた「3つの勝てる採用戦略」


では、このデータから私たちが導き出すべき、10月以降の具体的な採用アクションとは何でしょうか?

ただお金をかけて流行りのツールを入れるのではなく、求職者の「行動のリアル」に合わせた3つのシフトを提案します。



【10月以降に踏み出すべき「3つの採用シフト」】

 ┌──────────────────────────────────────────────────────────────┐
 │ シフト①:【広場×狙い撃ち】転職サイト + 検索エンジンの二刀流 │
 │ シフト②:【スカウトの量から質へ】「1/100」ではなく「1/1」へ  │
 │ シフト③:【自社メディアの「翻訳」】HPを「採用仕様」に変える  │
 └──────────────────────────────────────────────────────────────┘

シフト①:求職者が集まる「メインスクエア」にリソースを集中する


データが示す通り、求職者の過半数が使っているのは「転職サイト(54.9%)」と「求人検索エンジン(34.6%)」です。


まずは、この2つの領域での見せ方を徹底的に磨き上げてください。 「ハローワークや無料媒体に10個出す」よりも、「主要な転職サイト1社+Indeed等の求人検索エンジンの最適化」に注力する方が、圧倒的に求職者の目に触れる確率は高まります。



シフト②:スカウトは「100人への一括送信」をやめ、「1人への手紙」にする


ダイレクト・スカウトの利用率ギャップ(企業35% vs 求職者20%)を埋める唯一の方法は、「手紙」としての精度を極限まで高めることです。


「条件に合致したあなたに送っています」という定型スカウトは、求職者に一瞬で見抜かれ、ゴミ箱行きになります。


「あなたの職務経歴書の〇〇という実績を読み、当社の〇〇という課題を解決できるのはあなたしかいないと思い、不躾ながらご連絡しました」


求職者が「自分だけに向けられた言葉だ」と感じたとき、初めて20%の狭い扉が開きます。量は不要です。「1/100」の一括送信を捨て、「1/1」の手紙を書きましょう。



シフト③:企業ホームページ(18.1%)を「応募の最後の背中を押す場所」にする


企業側の42.3%が「企業HP」を採用に使っていると答えていますが、求職者の利用率は18.1%です。

求職者は「仕事を探すため」に企業HPを見るのではありません。 「転職サイトで気になった会社が、本当に信頼できる会社かどうかを確認するため」にHPを見に来るのです。


つまり、企業HPは「集客の場所」ではなく「最後の信頼確認(選考)の場所」です。 会社概要やIR情報だけでなく、「どんな人が働いているのか」「どんな想いで事業をしているのか」という社員の生声を掲載しておくことで、転職サイトから流れてきた求職者の最後の背中を押すことができます。


6. おわりに:相手のいる場所に、自分の言葉で立ちに行く


10月1日。新たな期のスタートにあたって、一度自社の「採用の立ち位置」を見直してみませんか?


私たちはつい、「どんなツールを使えば楽に人が採れるか」「どの手法が最新か」という「手段の議論」に終始してしまいがちです。


けれど、データが教えてくれるのは、もっとシンプルで温かい真実です。


「求職者が集まっている場所に、誠実な言葉を持って会いに行く」


ただそれだけのことなのです。


求職者がスマホを握りしめ、不安と期待を抱きながら求人画面をスクロールしているその場所に、あなたの会社の「本当の魅力」や「働く価値」は届いているでしょうか。


手法に振り回されるのは、今日で終わりにしましょう。 10月からの新しい採用シーズン、求職者の声に耳を澄ませ、相手のいる場所へまっすぐな言葉を届けていきましょう。


(※本記事内のデータは、株式会社マイナビ「中途採用実態調査」および「転職活動における行動特性調査」に基づき作成・分析しています)



この記事の執筆者

坂本 迪宇

ネットフェニックス合同会社 代表取締役


神戸市在住。営業(全国5位)、コールセンターの現場改善、難関塾(灘中・洛南・東大寺・開成・麻布など)のマーケティング(10年で灘中合格約100名)を経験。泥臭い「現場の対話」と「再現性のある仕組み」を武器に、企業の集客と組織づくりを支援しています。


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